遺産分割協議と相続放棄との関係

文責:所長 弁護士 白方太郎

最終更新日:2021年05月24日

1 遺産分割協議は法定単純承認事由に該当する行為

 相続放棄を検討するうえで強く認識しておきたいことのひとつに、法定単純承認事由に該当する行為というものがあります。

 法定単純承認事由に該当する行為とは、行ってしまうと相続放棄が認められなくなる行為のことです。

 いくつか類型がありますが、問題となることが多いのは、相続財産の処分という類型です。

 この相続財産の処分には、相続財産の売却や廃棄のほか、遺産分割協議も含まれるのです。

 遺産分割協議が相続財産の処分に含まれる理由は、遺産分割協議は、相続財産を取得し、自身のものとして利用処分する意思の現れであると考えられているためです。

2 相続放棄と遺産分割協議

 遺産分割協議は法定単純承認事由に該当する行為であるため、これをしてしまうと、相続放棄をすることができなくなってしまいます。

 逆に、相続放棄をした場合は、初めから相続人ではなかったことになりますので、遺産分割協議の当事者としての地位を失います。

3 遺産分割協議後の相続放棄

 上述のとおり、遺産分割協議をした場合、原則として相続放棄はできません。

 しかし、現実には、遺産分割協議をした後になって、被相続人に多額の負債があることが判明することがあります。

 このような場合、遺産分割協議を無効とし、法定単純承認事由に該当する行為がなかったという法的構成で、相続放棄を認めてもらえることがあります。

 はじめから被相続人の債務の存在を知っていたならば、遺産分割協議をせずに相続放棄をしていたという場合、「錯誤」という理由により、遺産分割協議を無効にすることができます。

 このように裁判所へ説明することで、相続放棄を認めてもらったケースもあります。

 もっとも、すべての場面において相続放棄が認められるとも限りません。

 遺産分割協議をしたが、一切財産を取得していない場合には、認められる可能性は比較的高いといえます。

 逆に、遺産分割協議後、預貯金の名義を自身に変更したうえで、預貯金を引き出して使用してしまった場合は、困難であると言わざるを得ません。

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