相続放棄と管理義務

文責:所長 弁護士 白方 太郎

最終更新日:2023年10月11日

1 相続放棄をしても現に占有している相続財産の管理義務はある

 民法が改正され、令和5年4月1日以降は、相続放棄をした元相続人は、相続財産に属する財産を現に占有している場合のみ、相続人または相続財産法人に対して当該財産を引き渡すまでの間、管理責任を負うことになりました。

 占有している場合であっても、管理責任の内容は、財産の現状を滅失させ、または損傷する行為をしないという程度のものとされています。

 民法の条文は「相続の放棄をした者がその放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有している場合には、相続人又は相続財産法人に対して当該財産を引き渡すまでの間、その財産を保存する義務を負う。この場合には、相続の放棄をした者は、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存すれば足りる。」と改正されています。

 民法が改正された令和5年4月1日よりも前は、次順位の相続人が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならないとされていました。

 そして、管理責任の内容については、明確ではありませんでした。

 当時の法務省の見解も、「法定相続人の全員が相続の放棄をし、次順位の相続人が存在しない場合や、相続放棄者が相続財産を占有していない場合等において、相続放棄者が管理継続義務を負うかどうかや、その義務の内容は、必ずしも明らかではない」というものでした。

 実務上は保守的に条文を解釈し、例えば被相続人が所有していた土地や建物に関して、近隣の方などに損害が発生した場合には、損害賠償責任を負う可能性があるため、そうならないように管理する必要があると考えることもありました。

2 相続人全員が相続放棄をした場合

 被相続人が債務超過に陥っている場合などは、相続人全員が相続放棄をすることも珍しくはありません。

 相続人全員が相続放棄をした場合、相続人不在という状態になり、相続財産は相続財産法人という法人になります(法概念上は法人になりますが、感覚的にはとてもわかりにくいものだと思います)。

 令和5年4月1日よりも前であれば、土地の草刈りや建物の補修など、近隣の方に被害が及ばないような管理をする必要があると考えられました。

 もっとも、法改正後は、相続財産を占有していた相続人がいない場合、全く管理がされないということになり得ます。

 できることならば、元相続人や利害関係人が相続財産清算人(旧相続財産清算人)の選任申立てをし、選任された相続財産清算人(相続財産管理人)により相続財産を換価処分するか現物のまま国庫に引き継ぐという形にすることが望ましいと考えられます。

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